マピアの朝は早い。なんせ、寝るのが早いから。だって、やることないんだもん。酒ないし。21時に電気おちるし。だから自然と早起きしてしまう。早起きがまた気持ちいい。さんさんと降り注ぐ朝陽を浴びて、木々が大きく伸びをしているのが分かる。にょきにょきとね。
 宿は、村で唯一のホテル(という名の民宿)、「サン・ミゲル(Posada Sao Miguel)」にとった。川のほとりにある木造二階建ての館内は風通しが良く、周囲を彩る色とりどりの花が目にまぶしい。シジという兄ちゃんと彼のお母さん、それにスタッフ数人で切り盛りしている。皆、働き者で、親しみ易く、リラックスできる。





 午前中は大体、働いて過ごす。毎週、月曜日はパブリックワークの日と定められており、アヤワスカの採取や簡単な道路工事など、村の公の仕事をみんなで行うことになっている。報酬は食事で還元される。村の中心にある、通常閉まっている食堂がこの日は開き、朝から参加者に食事を配給する。食堂は朝から男たちで賑わい、あちこちで色んな話をしている。壁にはアルミ缶や資源ゴミの収集ノルマと実績値を表す表が張り出されていたりして、コミュニティステーションといった様相。ここでご飯を食べて、世間話をひとしきりした後で、みんなで仕事に出かけていく。


 もちろん、俺も働く。汗水流す労働の後の食事は格別である。豆やユカイモ、もろもろの野菜を煮込んだスープのぶっかけご飯が多い。パブリックワークがない日でも、後述する、サンタカーザ(Santa Casa)やメディシナフローレスタ(Medicina Floresta)に行って作業を手伝うと、大体お礼に食事を供してくれる。もちろん宿で金を払えば、メニューから好きなもの(と言ってもメニューは少ないが)を食べることは出来るけど、それじゃつまらない。村人と仲良くなるには、汗を垂らしながら一緒に働いて、汗を拭きながら一緒に飯を喰うのが一番の近道。そうすると、次に会った時にはもうアミーゴ、アミーゴなのである。


 村には当然のことながら車は無い。だって、外界と道路で繋がってないから。車がないので、車道も当然ない。騒音も、信号機も、排気ガスも、ない。人々は細い未舗装の道をとことこ歩く。どこも細い道なので、すれ違うときには必ず相手の顔を見る。自然と挨拶の言葉が出る。ちょうど山道ですれ違うときのように。コミュニティの絆の強さというのは、その地域の道幅に反比例すると思う。

              


 未舗装の道。当たり前のようでいて、当たり前じゃない。未舗装とは舗装していない、と同時に、その土地ごとの顔がよく現れる。例えば、宿のサンミゲルから、メディシナフローレスタに行く場合、橋を渡り、湿地帯を抜け、ジャングルに入り、原っぱを抜けて、ようやく辿り着くのだけれど、この道中、未舗装の道はさまざまな顔を見せてくれる。木製の橋と、湿地帯の木製の歩道は同じ木でも湿り気や質感が違う。ジャングルの中は土が湿っていて黒いが、原っぱは白く乾いた土が覆う。目に見える景色だけでなく、道も本当は色んな顔を持っている。


 滞在最初の方のある晩、なかなか寝付けなかった。何十回目かの寝返りで諦め、仕方が無いので、散歩に出ようと、ベッドを降りた。真っ暗なロービーを抜け、手探りで玄関を開ける。と、突然の明るさに息を呑む。朧月。やさしく、ほんのり光っていた。こんなに月光が明るいなんて初めて知った。川辺のベンチに横たわる。発電用のモーターも止まり、あたりを静寂が支配している。虫の声も聞こえない。目を閉じ、じっと、耳をそばだててみる。すると、ジャングルの植物たちの息吹が聞こえてくる。本当にそんな気になってしまう。目の前を流れる川面に、月光がきらきら反射する。
あ〜、あれで日本酒あったら最高だったなぁ・・・。






La vida diaria en Ceu do Mapia
・・・マピアでの日常風景

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